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[第11頁] ストレスチェックが新たなストレスに

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岩手医大出身で、外務省のメンタルヘルス・コンサルタントをしている鈴木満医師の講演を聞く機会があった。鈴木医師は職場のメンタルヘルスの専門家として知られ、現在は在外公館など外交の最前線で仕事する職員の精神保健を担っている。

講演で一番印象に残ったのは厚生労働省が50人以上の事業所に義務化した「ストレスチェック制度」への指摘だ。「ストレス症状のチェックではなく、職場環境改善制度と呼ぶべきものだ」とした上で「安易な取り組みは組織への不信感を増強し、組織の混乱、人間関係の悪化につながる」と警鐘を鳴らす。

検査は57項目で行われる。「 あなたの仕事について最もあてはまるものは」という問いに「 非常にたくさんの仕事をしなければならない」「時間内に仕事が処理しきれない」「一生懸命働かなければならない」などの項目の中から労働者が自分で該当するものを選ぶ。項目には「仕事の内容は自分にあっている」「 働きがいのある仕事だ」など肯定的な選択肢もある。

鈴木医師が危惧しているのは、正直な回答が得られるかどうかだ。労使関係が健全で信頼関係がある場合、結果が悪くても職場環境の改善は容易だろう。問題なのは正直な回答が得られない組織だ。結果が良くても潜在的なストレスは高いはずだし、上司や仕事への不満が高ストレスという結果になって出ることもあろう。

この制度では、高ストレス者と選定されれば、本人の申出で医師による面接指導が行われる。事業者は医師の意見を聞き、勤務時間の変更など必要な措置を取る。不利益にならない運用が求められているが、現場の労働者はどう受け止めるのだろうか。

結果は集団分析され、社内部署間での比較や他社との比較もできる。恣意的な選択による結果が一人歩きし、職場の人間関係が悪化したり、組織が混乱したりしなければいいが。

(K.Jobs)

2016.10.21更新

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