キャリア・カウンセラーの朝のミーティング。就活中の利用者が就職先を決断できないでいる理由に驚いた。本人は「中小企業でも問題はなく、社長から熱心に誘われ、ここに行きたいと思っている」と地場企業に決めたのにもかかわらず、「やっぱり大きな企業がいいのでは」と親が子の決心を揺るがすような助言をし、本人が迷っているという。そんなケースが増えている。
「ホテルや旅館に就職しようと思っている。でも、親は市役所も受けろと言っている。公務員試験は自信がないのに…」。みなが休むときに忙しく、シフト勤務など勤務条件も比較的厳しいものの「おもてなしの心」を実践できる職場で働くことを決めた子ども。成長を見守ってきた保護者なら、わが子の決断を後押ししてほしいと思うが、「そんなところで働くのか。もっといいところがあるのに」。行く末を心配するあまり、わが子の意思を尊重してやることができない。そして、親の言うことに反発できずに悩む子ども。こうなると子どもだけの相談では、なかなか問題は解決しない。
子どもの進路や就職について、親がかかわることはいいことだ。自分の仕事や自分の進路選択の経験を材料に子どもと話し合う。家庭は最高のキャリア教育の場だ。でも、自分の価値観や願いを子に押し付けるのはいかがなものだろうか。
今や「駆け落ち」は死語だ。男女が手を取り合い、遠くの土地に行き一緒になる。親からの意見で自分の進路に迷いが生まれ、相談に来る若者たち。「親の反対を乗り越え自分の思いを貫く」。そんな情熱や行動力がないことも心配だ。
(K.Jobs)
2016.08.26更新