先日、知人が訪ねてきた。出向社員として勤めていた関連会社から、本社に戻り昇進したとの報告だった。出向先での労をねぎらい、昇進を祝った。
驚いたのは近況報告。「キャリアコンサルタントの資格を取りましてね」。知人が勤めていたのは、日々の出来事に対応し、限られた時間の中で結果を出さなければならないような仕事だった。人材育成も今の言葉で言えば「OJT」。手本は先輩の後ろ姿だったという。
そんな会社に長年勤務した彼だったが、出向先で管理職となり責任ある立場から若手の部下や従業員と接する機会が増え、体系だった人材育成の必要性を痛感するようになった。時間を見つけ人材育成担当者向けのセミナーに参加。専門講師の指導で「若手社員育成のための関係性づくりと指導法」「社員の意欲と行動を引き出す関わり方」などを学び、関心を高めた。
セミナーをきっかけに、職場でも実践したいという意欲も生まれ、仕事の合間を縫って「キャリアコンサルタント」講座に通った。目標の国家資格試験を受け、見事合格。「ファイナンシャルプランナーの資格も取りたいと思っています」と向学心は衰えない。
厚生労働省によると登録者数は2019年4月末で約4万3,200人。活動状況等に関する調査では、キャリアコンサルタントは都市部、大企業、40代以上の中高年者層に多いという。この10年で、活動の場は公的就労支援機関から企業内に移った。背景には派遣法改正によるキャリアコンサルティングの義務化、セルフ・キャリアドック制度の推進など企業内キャリアコンサルティングを後押しする制度的な影響が大きいと分析する。
国家資格を取得した知人は本社に戻り、責任の重いポジションに就任した。勉強の継続もカウンセリングの実践もしばらくはままならず「人生設計が少し狂いました」と残念そうだった。新たなポストは総務や人事担当ではないので人材育成をメーンにというわけにはいかないだろう。日々の仕事の中でキャリアカウンセラーマインドを発揮し、社内に新しい風を吹き込んでほしい。
(K.Jobs)
2019.5.15更新