八幡平市出身の小林陵侑がビッグジャンプを連発している。年末年始にドイツとオーストリアで開かれた伝統の「スキージャンプ週間」で4戦4勝して総合優勝し、W杯年間王座も確実視されている。小林だけでなく、米大リーグに二刀流で挑戦し新人王を獲得した大谷翔平、大谷の花巻東高の先輩でマリナーズ入りが決まった菊池雄星、スノーボードの岩渕麗楽(一関市)、フリークライミングの伊藤ふたば(盛岡市)ら県出身者が世界の舞台で活躍している。スポーツ界での日本の若者の活躍は目覚ましく卓球、バトミントン、フィギュア・スピードスケート、水泳、サッカーなど多くの競技で世界をリードする。
日本は今、世界でも類をみない少子高齢化社会になっている。そんな中「どうして世界で活躍する若者が出てくるのか」とその要因を探る論考は多い。一つは「ゆとり教育」だ。大谷、羽生結弦、高木美帆、桃田賢斗に代表される1994年生まれはゆとり教育ど真ん中で育った。学校は週5日制になり、長くなった放課後を自分のために使い、総合学習では自分で考え、自分で決めることを学んだ。それと共に指摘されるのは発掘から育成までの体制整備だ。小林は岩手県がスポーツエリートを選抜して育成する「いわてスーパーキッズ」第1期生だ。
ある経済学者は、こんな若者の活躍が日本企業復活の鍵とみる。「生産性とは何か―日本経済の活力を問いなおす」(ちくま書房)で学習院大教授の宮川努はバブル崩壊後、日本経済が停滞する理由は生産性向上をなおざりにしてきたからと強調する。処方箋について宮川は若者の活躍に目を向ける。旧態依然としたパワハラが問題となったスポーツ界の中で、若手が活躍する種目の競技団体は才能ある若者を発掘し切磋琢磨させ、科学的データに基づく育成をし、外国人コーチの招聘、海外移籍などを実行している。そこから導き出される生産性向上のキーワードは「競争性、合理性、多様性」と指摘する。
競争力をつけ、合理的で多様性のある働き方や人材育成、事業展開で世界と闘っていく。日本企業復活のヒントは、小林陵侑を育てた八幡平市田山や秋田県鹿角市花輪のジャンプ台にあるのかもしれない。
(K.Jobs)
2019.1.10更新