少子高齢化が進み国内の労働力不足は深刻で、政府は在留資格の新設などで外国人労働者の受け入れ拡大に向け舵を切る。県内でも遠野市と釜石市の企業・団体が外国人実習生受け入れのため共同事業に乗り出すと地元紙が報じた。これからは地方の特に中小企業で「人手不足倒産」が多発するのではという指摘も少なくない。
そんな中、海外市場に目を向け頑張っている県内の中小企業がある。先日独立行政法人国際協力機構(JICA)の越川和彦副理事長が来県した。前スペイン大使の越川氏はJICAでは中小企業海外支援事業本部長で、本県3企業の視察が目的だった。1社は一関市の株式会社モディー。PIUS(ピウス)という電動車両の組み立てキットとそれに関連した開発技術、ものづくり人材育成教育プログラムがベトナムの職業訓練で使われている。
ほかの2社はいずれも土木建設業だ。一つは遠野市の株式会社栄組。創業60年を超える地域の総合建設会社で、他社にない優れた技術を持っている。JICAの中小企業海外展開支援事業の基礎調査(予算850万円)に採択されたのは「ブラジルでのコンクリート構造物劣化診断と補修」。同社は国内で問題となっているコンクリート構造物の経年劣化(ひび割れ)を調べ、処理・補修を行う「SIMMS」というマネジメントシステムを開発した。システムの中心は、特許を取得した「圧力調整注入工法」。低圧から高圧まで注入圧を調整してコンクリートのひび割れにさまざまな補修材料を注入する。海外でのビジネス実現性をブラジルで調査する。
もう1社は北上市の株式会社アサヒテクノ。軟弱地盤などを改良する技術「スーパーウエルポイント(SWP)工法」を持ち、マレーシアでの地盤改良、洪水対策として基礎調査よりランクが上の「案件化調査(予算3千万円)」に採択された。同社は経営の失敗から倒産した会社の社員有志が「この独自技術を生かしたい」と立ち上げた会社だ。有志の一人がたまたま北上市出身で、同市でリスタートした。優れた技術を武器に国内だけでなく国外でも受注実績を挙げている。
3社とも従業員30人前後の企業規模にもかかわらず、国内市場が縮小するなか、海外に目を向けそれを実行している。冒頭で書いた、遠野釜石の企業・団体が行う「外国人実習生受け入れ」の共同事業。将来は海外に合弁会社を設立する計画もあるという。県内中小企業の「グローカルな挑戦」を応援したい。
(K.Jobs)
2018.10.17更新