講演会があった。タイトルは「人材戦略セミナー 人と組織の新しいキャリア改革の方向性」。最初に演壇に立ったのはリクルートワークス研究所の労働政策センター長中村天江(あきえ)さん。厚労省の同一労働同一賃金の実現に向けた検討会や経済産業省の雇用関係によらない働き方に関する研究会の委員を務めている。数学研究者の経歴を持つ中村さんは日本の現状を分析、論理的な帰結から2030年の新たなワークモデルを提示した。いわく「構造的人材不足を迎えた日本経済は分岐点に立つ。繁栄のシナリオにするためには『多様な働き方』を選択し、多様な人材で労働市場を活性化することが求められる」と強調する。その肝はマネジメントにある。多様な働き方は個別的な働き方。社員のマス管理から一人一人の持ち味を生かす「モザイク型」人材活用にし、役割と成果でのマネジメント、ジョブ型雇用、そして多様な人材をそれぞれ特有の経験やスキル、考え方が活用される「ダイバーシティ&インクルージョン」の実現を求めている。
もう一人の講演者はオタフクホールディングスの人事部長島原由里子さん。広島市本社の同社はオタフクソースで有名だ。島原さんは同社プロパーで、若いながら執行役員をしている。パート社員の正社員登用、事業所内保育園など子育て支援エンゼルプランの実行、「ノーリーズン休暇」の導入などさまざまな働き方改革が紹介された。同社の取り組みの基調にあるのは「働き続けたいと思われる魅力ある会社」を目指す経営姿勢と「働き続けてほしいと思われる人材」を目指す従業員が、ともに笑顔で働ける職場だ。
二つの講演、対照的なようで共通点もあった。参加した経営者や人事担当者は、将来の日本の雇用を見据える新たな視点を得たに違いない。
(K.Jobs)
2017.02.27更新